今までに経験したことのない酷暑が続いた北海道ですが、稜線歩きの長い縦走では水場の状況が常に変化しています。不確かな情報に左右されず、その時の天気傾向と自分のレベル、食事プラン、天気やコンディションによってベストな余裕を持った給水プランを立てましょう!
2021.8.10現在、北海道は台風の影響で大雨が降っています。気温もグンと下がり、これからは快適な登山日和に移行すると思いますが、これからは低体温のリスクもしっかり頭に入れ行動しましょう!今回は知床縦走に関する水場情報に加え、簡単ですが、熱中症、低体温、クマ対策にも触れています。知床に限らず、これから北海道の山を歩く方への山行計画の一助になればと思います。
※あくまでも僕個人の経験に基づくアドバイスです。各自のレベルや経験に合わせて参考にしてください!
★熱中症対策
下界で気温が30℃を越えるような日、そして風が弱い日などは、熱中症のリスクが高まります。特に縦走の重い装備を背負っての森林限界、ザレ場などはしっかりとした対策を取りましょう!よくある熱中症患者への初期対応は、水があっての処置がほとんどです。飲み水も乏しい山行中においては、極力事前回避のための行動をとりましょう!そしてもし熱中症と疑わしい場合は、無理をせず早めの対処が重要です。
・がぶ飲み厳禁、休憩時(およそ45分~1時間程度に1回)に喉を潤す感じがベター
※水場がある場合はしっかり給水しましょう
・気温が上がる日中を避け、早朝または日が傾く時間帯での行動を心掛ける
・水分以外に塩分や糖分をしっかり摂る
※タブレットなど口で溶けるタイプは逆に水分を欲します。小さい飴などをこまめに舐め、出発前や休憩時にスープやミニカップラーメンを食べるのもよいです(スープやラーメンは体を動かすのにバランスの良い栄養分が入っています)
・できるだけ日陰、風通しのよい場所での休憩
・暑さが厳しい場合は通常よりもゆっくりなペースとする(それに合わせた行動プラン)
・水場や雪渓ではしっかり体(特に頭や首)を冷やし、可能ならジップロックやプラティパスに水や雪を詰めて冷却に心掛ける
※帽子と頭の間に雪を載せたり、タオル(冷却用タオルがベター)を濡らすと、1ピッチ分は問題ないです…多分(笑)
・僕らガイドツアーでは山での食事は水を多く使いますが、渇水時期は、ドライフーズ、湯煎で対応できる水少な目な調理を心掛けましょう
・テルモスは非常に重要な装備です。若い人に多く見られる『わたしお湯は飲まないんです~』的な思考は捨て、いろんなリスクや時短に活躍するテルモスを持ちましょう。温かいお湯は、がぶ飲みをせず、適度に水分を補給できるもっともベストな水分補給法だと思います。
※ハイドレーションシステムは水の残量がわかりづらいので、できるなら水筒で小分けにして持つのがよいです。
人数が多いグループの場合は
ドロメタリーバッグ 4-6ℓ、個人的にはナルゲンより
プラティパス(500ml、1L、1.5L)が軽くて持ちやすく低体温にも代用が効きます。お湯は山専やモンベルの水筒がおすすめです。もちろん、MSRの浄水器、
トレイルショットは軽くて持ち運びも便利でかなりおすすめです!
⇒もしも、熱中症になったら…
しっかり休み、荷物を分担。飲料水が乏しい場合は、食欲が出るまで休み、残りの水をプラティパスに入れて鼠径部や熱を持った部分を冷やす。または風を送ってあげる。症状によっては早めのレスキュープランも考える。電波圏外やクマのリスクを避けるために、できる限りビバーク地点など事前に考慮しておくとよい
★低体温対策
北海道の山は熱中症のリスクよりも低体温のリスクの方がはるかに大きいです。この下界の暑さに惑わされず、真夏でも霜が降りるくらい気温が下がるので、しっかりとした防寒、防水対策を取りましょう!ちなみに8/11の大雪・十勝山系の最低気温は2~3度です…。
・山での行動中は、汗、雨、ガスなどで衣類が濡れる場合が多いです。早めの雨具着用や、できるだけ汗で衣類を濡らさないようにし、乾いた着替えを日数分用意しましょう
・濡れる状況での行動は、休憩ポイント、テント設営場所までのスケジュールをしっかり管理し、体が冷え切る前にすべての行動(片付けなど)を終えるようにします
・山中泊を伴う山行では、各テントごとに火器類があると暖をとったり、衣服を乾かしたり、また暖かいお湯を作ってプラティパスなどに入れて湯たんぽやアイロンとして活用することも可能です
・寒くならないよう、喋って食べて行動をし続けるようにしましょう
・稜線で暴風雨にあたる時間を極力少なくし、どうしても通過しないといけない場合は、タイムスケジュール、ビバークポイントなどを考慮し、行動不能になる前に躊躇せず引き返す勇気が必要です。もし行き詰った場合は体力があるうちに風裏でテント、ツェルトでビバークできる体制を整えておきましょう
★ヒグマ対策
知床のクマも海と山では若干対応も違うし、年齢や、親子か否か、出会った距離や、その時のクマの行動(捕食中、移動中など)、個体によっても対応は異なります。当然ながら、大雪山や日高、街中に出てくるクマ、そして人と会ってる頻度によってもそれぞれ対応が変わってくるので、一概には言えませんが、基本は自分たちが居る(進む)ということを相手に伝えることです。僕はガイドとしてベアスプレーは持ちますが、これで安心かというと全くそんなことはなく、一発勝負なところがあるので、お守りとして持つ程度です(笑) クマ鈴は基本使いません。ホイッスルもありますが、使う場合は遠くにクマを発見したときに風がない場合に吹きます。特に捕食中のクマは食べるのに夢中で、数十メートル先にいても、ホイッスルなど鳴らしてもまったく意に介せず行動することがほとんどです。それよりも、視界の利かない場所、見通せる場所、藪漕ぎや沢筋、草地帯など、状況に合わせて、できる限り早めにクマを発見するため、目や耳の感度を上げて、もしクマを発見した場合はどういう状況なのかを判断することがベターです。暗くなっての行動はとても危険なので、クマが登山道に居座る場合は、撤退も含めて余裕を持った行動スケジュールを立てておきましょう!
まぁ、知床に限らず、僕の住む家の横には時々クマも出没するし、札幌の街中にも出てくる時代です。クマに出会ったときの対処を、車で追っかけるなとか、こうするべきだ!などとマウントを取ってくる人もいるけど、実際はその状況次第でたぶん対応は異なるんだろうなと思います。今年も全道各地でいろんなクマに逢っているけど、前述した対応以外は僕も臨機応変に動いてるだけで、一番はいつ何時もクマが目の前に現れる前提で行動し、落ち着いて対応することが重要なのかもしれません。
距離にもよるけど、若いクマには人間は怖いぞ!的な対応をし、親子は温かく見守って逃げる余地を作ってあげる、大きくベテランのクマはあんまり干渉せずに放置プレイなどが良いかもしれません(笑) 僕は、過去に行っていた春クマ駆除のような方法ではなく、適正な数と生息域、そして個体の性格をある程度管理しながら、クマとの共存を図るべきで、人身事故が多くなってる現在、しっかり管轄行政(羆害の場合は北海道など)が一つ一つの事故をしっかり検証をして、少なくとも関係機関にはどういう行動で襲われ、装備や状況などもアナウンスするべきだと考えます。コロナと同じで、知らないものや、見えないものに対し、恐怖心を煽る過剰反応や、間違った対策だけは避けて欲しいものです。。。
★知床縦走 水場情報
その日の気温、天気、行動時間帯、山中泊数、人数、調理内容、普段の水分補給量によって、各自またはグループの必要量は随時変化するのが大前提となります。また、スタートが岩尾別、羅臼温泉、硫黄岳によっても若干変わってきますが、8月の稜線の水場は限られてきますので、もしもの時用に、各自普段の1.5~2倍くらいは見積もってた方が安心です。最新の水場情報は以下の写真&キャプションを参考にしてください!!
2021.08.07時点 知床縦走 登山道 水場情報
弥三吉水。豊富です。ここで翌日分の飲料水、調理水も荷揚げするのが得策です
銀冷水 たぶん大丈夫だけど、勢いはだいぶなくなってます
大沢は水も雪渓もなし!
羅臼コース側の雪渓は豊富です。水場は結構下なので時間に余裕をもちましょう!
※羅臼平から5~10分
岩清水。ポタポタ状態ですが、ペットボトルをきちんとセットしてあげると、羅臼往復の30分程度で350mlは溜まりました。漏斗があればそこそこ行けると思います。暇な方はどうぞ(笑)
三ツ峰のテン場は、写真はないけど、かろうじて取れてました。お盆までは大丈夫かと…。
飲料水よりは調理用として。
サシルイオッカバケ間の池塘。摂れるけど、調理用ならって感じです
サシルイから硫黄方面の下りにある雪渓(こっちがベター。写真無し)、オッカバケと二ツ池の間の雪渓(写真上。コースから外れます)は、どちらも午後雪解けが進めば摂れます。朝早くは無理~
二ツ池。天の池は枯れてます。地の池はこんなん。猛暑が続いても8月いっぱいはイケそう
☆二ツ池~硫黄第一火口分岐までは水場なし!暑い場合はここ注意です
第一火口分岐から15分降りたとこの雪渓は3m以上の厚さがあるので、しばらくは大丈夫そう。どちちらの方向に行く方も、水が不安な場合はちょっと寄り道だけど、しっかり給水しましょう!
右の岩壁の間は3-4mの深さあり。
硫黄岳から沢出合いの途中、下部にはザレ場の下に雪渓残っています。下の写真のように、雪を削ればきれいな雪が取れるので、冷却用として活用しましょう!
ただし、発見できるかできないはあなた次第…(笑)
以上、参考までに知床の水場情報でした~